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研究チーム

岡田 麻衣子

ユビキチン鎖種特異的な高感度アプタマーアレイの開発

岡田 麻衣子

研究代表者 岡田 麻衣子

東京工科大学応用生物学部 応用生体科学研究室 助教
https://yano-lab.bs.teu.ac.jp

研究概要

2000年代初めに、生命現象の根幹をなすヒトのゲノム配列が決定され、実に多くの遺伝子の存在が明らかとなりました。これらの遺伝子群はタンパク質として発現して生体内で機能するわけですが、どのようにして複雑多岐に渡る生命現象を支えているのでしょうか?バイオテクノロジーが飛躍的に進んだ現在においても、その仕組みの多くは謎に包まれており、生命現象を紐解くことの魅力を物語っているようにも思えます。このように、タンパク質が緻密に制御されながらも多彩な機能を発揮できる仕組みとして、その1つにタンパク質の翻訳後修飾が考えられます。タンパク質に付加された修飾が、コードとなって別のタンパク質に読み取られ、適切な生命現象へと変換されていきます。このコードが幾重にも重なることで、緻密な生体反応が連なっていくとも考えられます。
ユビキチンは、自身もタンパク質でありながら、翻訳後修飾基として働く不思議なタンパク質です。ユビキチン修飾の形態も様々であり、単体として標的タンパク質に付加するモノユビキチン化に加え、8通りの様式で連結したポリユビキチン化が存在します。ポリユビキチン鎖の長さも多岐に渡り、ユビキチン修飾はその鎖の種類や長さを組み合わせて様々な生命現象へ変換されていくと考えられます。興味深いことに、近年の研究により、ユビキチン自身が翻訳後修飾を受けることが明らかになってきました。ユビキチン修飾の暗号は2重にコードされており、これまで想像していた以上により階層性を持って生命現象の根幹に関わっているのかもしれません。
このように、ユビキチン修飾の魅力的な多様性が次々と明らかになる一方で、各々がいかなる生命現象へと繋がっているのかは、まだまだ謎が多い現状です。これらの暗号を解読するには適切なツールが必要であり、「抗体」が長年その役目を務めてきました。そして、ユビキチン修飾の多様性が明らかになるたびに、新たな抗体の作出が精力的に行われてきました。想像以上の多様性により目覚ましい展開を広げるユビキチン修飾の意義を紐解くには、既存の抗体だけでなく新たな分子認識素子を積極的に取り入れていくことが必要かもしれません。
このような観点から、私は1本鎖核酸であるアプタマーに着目しました。アプタマーは固有の高次構造を形成することで、抗体にも代わる分子認識能を発揮することが知られています。その作出は試験管内の反応のみで行うことが可能であり、安価なだけでなく、修飾基の導入などの改変も容易に行うことが魅力の1つです。そこで本研究領域では、ユビキチン鎖種に特異的なアプタマーを獲得し、多様なユビキチン修飾形態を識別可能なアプタマーアレイを作製することを目的としています(概念図)。これにより、既存の抗体だけでは検出できなかったユビキチン修飾の意義を明らかにし、ユビキチン修飾を一連の暗号として生命現象を紐解くことを目指しています。

研究概要を示す模式図

研究概要を示す模式図

代表的な論文

  1. Chen ST, Okada M, Nakato R, Izumi K, Bando M, *Shirahige K.
    The Deubiquitinating Enzyme USP7 regulates Androgen Receptor Activity by Modulating Its Binding to Chromatin.
    J. Biol. Chem. 290, 21713-21723 (2015)
    PMID: 26175158
  2. Okada M, Ohtake F, Nishikawa H, Wu W, Saeki Y, Tanaka K, *Ohta T.
    Liganded ERα stimulates the E3 ubiquitin ligase activity of UBE3C to facilitate cell proliferation.
    Mol. Endocrinol. 29, 1646-1657 (2015)
    PMID: 26389696
  3. Nakajima S, *Watashi K, Ohashi H, Kamisuki S, Izaguirre-Carbonell J, Kwon AT, Suzuki H, Kataoka M, Tsukuda S, Okada M, Moi ML, Takeuchi T, Arita M, Suzuki R, Aizaki H, Kato T, Suzuki T, Hasegawa H, Takasaki T, Sugawara F, Wakita T.
    Fungus-derived neoechinulin B as a novel antagonist of liver X receptor, identified by chemical genetics using hepatitis C virus cell culture system.
    J. Virol. 90, 9058-9074 (2016)
    PMID: 27489280
  4. Tsuruga T, Kumai T, *Okada M.
    UBE3B and UBE3C functionally regulate cell proliferation through the ubiquitin-proteasome system.
    J. St. Marianna Univ. 45, 149-159 (2017)
  5. Tamura S, Okada M, Kato S, Shinoda N, Fukunaga K, Ui-Tei K, *Ueda M.
    Ouabagenin is a naturally occurring LXR ligand without causing hepatic steatosis as a side effect.
    Sci. Rep. 8, 2305 (2018)
    PMID: 29396543