森戸 大介
ユビキチン化異常を起点とする血管障害の統合的理解と創薬
研究代表者 森戸 大介昭和大学 医学部 生化学講座 講師 |
研究概要
ミステリン(別名RNF213, ALO17)は約600kDaの巨大な細胞内タンパク質で、脳血管疾患もやもや病の発病に関わる因子として同定されました。私たちはミステリン遺伝子の初めての分子クローニングを行い、ミステリンタンパク質が運動性ATPアーゼ活性やユビキチンリガーゼ活性を持つこと、また、生理条件下で細胞内の脂肪貯蔵サイトである脂肪滴に局在して、脂肪代謝を制御する機能を持つこと、もやもや病責任変異によりこのような機能が失われることなどを世界にさきがけて解明してきました。
最近、国内外のグループより、私たちの見出したミステリンの運動性ATPアーゼ活性はモーター分子であるダイニンに類似した活性であること(ただしその意味は依然として不明)、ミステリンのユビキチンリガーゼ活性は従来知られていない非典型的な様式による可能性があること、もやもや病責任変異として同定されたミステリン遺伝子変異はもやもや病のほかにもアテローム血栓性脳梗塞や肺高血圧など、はば広い血管病態と相関することなどが相次いで報告されています。その一方で、ミステリンの酵素活性、細胞内機能、血管障害形成機序のそれぞれの詳細および3者の関係はまだほとんど未知に近い状態です。言い換えれば、ミステリンがどのような酵素であり、生理的/病的条件においてどのような細胞内機能を持ち、それがどのように個体における血管障害の形成につながっていくのか、いまだ解明を待つ状態です。
本研究課題では特にミステリンのユビキチンリガーゼ活性に注目しながら、これら3者それぞれ(分子・細胞・個体レベルでのミステリンの挙動)の詳細解明および3者の関係の解明を進めるとともに、ミステリンの病態機能の理解およびケモユビキチンテクノロジーに基づいた創薬研究に取り組みます。
研究概要を示す模式図
代表的な論文
- Morito D, Nishikawa K, Hoseki J, Kitamura A, Kotani Y, Kiso K, Kinjo M, Fujiyoshi Y, Nagata K.
Moyamoya disease-associated protein mysterin/RNF213 is a novel AAA+ ATPase, which dynamically changes its oligomeric state.
Sci. Rep. 4, 4442 (2014)
PMID: 24658080 - Kotani Y, *Morito D, Yamazaki S, Ogino K, Kawakami K, Takashima S, *Hirata H, *Nagata K.
Neuromuscular regulation in zebrafish by a large AAA+ ATPase/ubiquitin ligase, mysterin/RNF213.
Sci. Rep. 5, 16161 (2015)
PMID: 26530008 - Kotani Y, *Morito D, Sakata K, Ainuki S, Sugihara M, Hatta T, Iemura SI, Takashima S, Natsume T, Nagata K.
Alternative exon skipping biases substrate preference of the deubiquitylase USP15 for mysterin/RNF213, the moyamoya disease susceptibility factor.
Sci. Rep. 7, 44293 (2017)
PMID: 28276505 - Sugihara M, *Morito D, Ainuki S, Hirano Y, Ogino K, Kitamura A, Hirata H, Nagata K.
The AAA+ ATPase/ubiquitin ligase mysterin stabilizes cytoplasmic lipid droplets.
J. Cell Biol. 218, 949-960(2019)
PMID: 30705059 - *森戸大介:「もやもや病遺伝子の代謝制御機能」生化学 第91巻第6号815-819 (2019)