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代表挨拶

Introduction

平成24年度より、新学術領域研究「ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム」(略称:ユビキチン制御)が発足致しました。ユビキチン修飾系はタンパク質分解系の一部として発見された経緯から、「ユビキチン」=「分解」として研究が発展し、科学研究費補助金においても、これまではオートファジー、カルパインなどの分解系と一緒に「分解」の領域を形成して活動してきました。

ユビキチン修飾系の重要性は「時を得て選択的に基質タンパク質を識別してユビキチンを付加できる」能力に依ります。それゆえ、細胞はユビキチン系を用いて「望むときに、望む場所」で特定のタンパク質にユビキチンを結合させて分解に導くことで自らの機能を制御できます。しかし、この「望むときに、望む場所」でユビキチンを付加するシステムは、分解にとってのみ重要なのではありません。実際、ユビキチン修飾系は分解も含め、多様な様式でタンパク質機能を調節することにより多彩な生命現象の制御において中核的な役割を果たすことが明確となりつつあり、ユビキチン研究は新たな「ネオバイオロジー」の時代に突入しています。一方で、ユビキチン研究手法は複雑化・高度化し、1つの研究室で全ての研究手法に対応することは不可能な状況です。

そのような状況を踏まえ、本領域の計画研究班ではユビキチン修飾系の研究者のみならず、ユビキチンを視野に入れつつDNA修復、転写、膜タンパク質制御、刺激伝達など多様な分野に携わる研究者を結集してユビキチン研究を遂行するとともに、今後のユビキチン研究に不可欠な実験手技の開発を進めます。本領域では、計画研究代表者らがすでに樹立した研究試料・手法のみならず、本領域で開発する新規ユビキチン解析手法を計画研究班・公募研究班の区別なく提供して領域の発展に資することを目指しており、この研究プラットフォームの構築が本領域の大きな特徴であると考えています。

公募研究班としては、まだpreliminaryであってもユビキチン研究を発展させるようなポテンシャルのある研究、例えば、ユビキチン修飾系の新機能に関するバイオロジー・構造研究、新規研究手法を活用することで世界を席巻できるような研究、ユビキチン系の新規解析技法の開発研究などに従事されておられる先生方に参画いただければと思っております(ただ、採択件数に限りがありますので、preliminaryすぎて採択できない場合はご容赦ください)。また近年、植物・微生物の領域においてもユビキチンの重要性が明確になってきておりますので、植物・微生物の領域の先生方の参画も大歓迎致します。

多くの先生方に本領域に参加していただき、ともに切磋琢磨して日本のユビキチン研究をさらに大きく発展させ、領域終了時には、もう「ユビキチン」=「分解」と言われないような成果を残すことを目指しております。どうかよろしくお願い申し上げます。


平成24年9月1日

領域代表
京都大学・大学院医学研究科

岩井 一宏
 


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