PubMedID 23754282 Journal J Biol Chem, 2013 Jun 10; [Epub ahead of print]
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Title Parkin catalyzed ubiquitin-ester transfer is triggered by PINK1-dependent phosphorylation.
Author Iguchi M, Kujuro Y, ..., Tanaka K, Matsuda N
公益財団法人東京都医学総合研究所  蛋白質代謝研究室    松田憲之     2013/06/30

Parkin の E3 酵素機能が活性化される仕組み
公募班員の松田憲之です。先日 JBC 誌に受理された我々の仕事を紹介させていただきます。本研究は蛋白質代謝研究室(リーダー:田中啓二博士)のもと、井口正寛さん(現:東京女子医科大学・神経内科)、久住呂友紀さん(慶応義塾大学・神経内科)、尾勝圭君(大学院生)を中心に行われた研究です。

<研究の背景>
遺伝性劣性パーキンソニズムの原因遺伝子産物 Parkin は RING フィンガーモチーフを有するユビキチン連結酵素 (E3) であり、ミトコンドリアの品質管理に必須の役割を担っていることが明らかになりつつあります。我々は 2010 年に通常状態の細胞中では Parkin の E3 酵素活性は抑制されており、ミトコンドリアの膜電位が低下した時に初めて活性化される E3 酵素であることを報告していましたが (松田ら (2010)、JCB 189, pp211-21)、その分子レベルの仕組みは不明なままでした。
さらに 2011 年には、高濃度の E1 存在下・アルカリ条件下ではありますが、Parkin が E2 (Ubiquitin conjugating enzyme)-非依存的にユビキチン化を触媒できることを報告しました (Chew, 松田ら (2011)、PLoS One. 6, e19720)。しかしながら、RING フィンガーモチーフの機能が E2-結合ドメインであるとする従来のモデルとあまりにも相性が悪く、当時は Reviewer を納得させることができませんでした。

<結論>
今回、Parkin がユビキチン化を触媒する分子メカニズムの解析を通じて、これらの謎をかなり説明できるようになってきたので紹介します。(少し長くなってしまいました。済みません。。。)

1)まず、Parkin は典型的な RING フィンガー型 E3 ではなくて、活性中心のシステイン (Cys431) にユビキチンをエステル結合させてから基質に移行させる E3 であることを示しました。この触媒様式は、RING フィンガー型 E3 というよりも HECT 型 E3 に近いものです。

2)次に、ユビキチンと Parkin がエステル結合した中間体の形成が、ミトコンドリアの膜電位の低下した条件下、PINK1 の存在下でなければ起こらないことを示しました。

もともと Parkin を含む RING-IBR-RING family が RING 型 E3 というよりも HECT 型 E3 であると言い出したのは Klevit のグループなのですが (Wenzelら, 2011, Nature 474, pp105-8)、Parkin が HECT 型 E3 であるといわんばかりのタイトルに反して、彼女らの論文中では Parkin とユビキチンのエステル結合形成は示されていません(上記論文の Fig. 4C)。後述のように、細胞内ではミトコンドリアの膜電位が低下した時、試験管内ではN-末端側の自己阻害が外れた時にしか Parkin とユビキチンのエステル結合は観察できないと考えると、この矛盾点は非常に理解しやすくなります。

3)N-末端側を切り縮めた Parkin の機構解析から、Parkin の活性中心である RING2 は E2 結合領域ではなくて、ユビキチンーエステルの交換反応やアシル基転移反応を触媒することが解りました。

4)最後に、一連のユビキチンーエステル結合・交換反応には、PINK1 による Parkin のSer65 のリン酸化が必須であることを示しました。この部位のリン酸化自体は MRC の Muqit のグループ(Open Biol. 2, 120080, 2012)や順天堂大学の服部先生らのグループ(Sci Rep. 2, 1002, 2012)が先に報告されていたもので、その重要さ・正しさが再確認されたことになります。

<考察>
このトピックに関しても厳しい競争になり、Parkin の Cys431 におけるユビキチンーエステル形成については、我々と独立に NIH の Richard Youle グループからも論文が報告されました (Lazarou ら、J Cell Biol. 200, pp163-172, 2013:彼らの方が先行して論文を発表しました)。

もうひとつ驚いたことは、我々の論文とほぼ同時に4つのグループから Parkin の立体構造が報告されたことです
[Riley, B. E., et al. (2013) Nature communications 4, 1982;
Spratt, D. E., et al. (2013) Nature communications 4, 1983;
Wauer, T., and Komander, D. (2013) The EMBO journal, in press;
Trempe JF, et al. (2013) Science. 340(6139):1451-1455]。
構造的な知見からは、1) Parkin の RING2 は E2 結合ドメインではないこと、2) E2 結合ドメインは RING1 であること、3) Parkin が E3 として機能する為に必須の RING1 と RING2 ドメインは、Parkin 自身の別なドメイン(Repドメインと RING0/UPDドメイン)によって完全に塞がれていること、が示されました。

これらの構造的な知見を念頭に我々の以前のデータを見直すと、非常に良く見えてくることがあります。例えば、以前に我々が JCB で報告した「通常時の Parkin が不活性型である」という考えは、普段は Repドメインと RING0/UPD ドメインが RING1 ドメインと RING2 ドメインを塞いでいるから、と言い換えることができます。我々が PloS One で報告していた「Parkin による E2-非依存的な E3 活性」も、自己阻害領域である RING0/UPD が無い為に構成的活性型になった RING2 ドメインが、過剰量に存在する E1-ユビキチン結合中間体からユビキチンーエステルを dis-charge する活性を観察していたものと理解できます。また、RING2 に E2 との結合に必要な構造領域が保存されていないことは、「RING2 は E2 結合領域ではない」という我々の結論とも一致します。

Parkin に関してはまだまだ解らないことだらけですが、ようやく深い意味で理解できる部分が増えてきたように思います。
   
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